Memo
○情報化組織には、特定の行動に置き換えることのできる、明瞭で簡潔な共通の目標が必要である。(中略)情報化組織は、一つか、ごく少数の目標に集中していなければならない。
○情報化組織は、企業、個々の部門、専門家が上げるべき成果についての経営陣の期待を明らかにした目標を中心に組織されていなければならない。また各人が自己規律のもとに成果を上げられるよう、期待と成果比較できる体系的なフィードバック方式がつくられていなければならない。
○組織のなかの一人ひとりは、自分の仕事を遂行し貢献するのに必要な情報は何かをつねに考えていなければならない。
○経営者や専門家は、どういう情報が自分に役立つのか、どういうデータが必要かを考えなければならない。それにはまず、自分たちが何をしているのかを知り、次に何をすべきかを決めなければならなず、最後にそれがどの程度うまく遂行されているかを評価しなければならない。
○日本的なアプローチの中核には、新たな知識創造とはたんなる情報処理の問題ではない、という認識がある。むしろ知識創造は暗黙的で、しばしば高度かつ主観的な洞察や直感、従業員一人ひとりの発見をいかに引き出せるか、そして企業全体としてそれらの直感をいかに検証し、利用できるかにかかっているのだ。
○表出化(暗黙知を形式知に転換する)と内面化(自己の暗黙知を拡張するために形式知を用いる)は、知識のスパイラルにおける決定的なステップである。
○暗黙知を形式知に転換することは、表現できないものを表現することにほかならない。そのための最も強力な手段は、不幸にも見逃されている。それは、比喩的な言語や象徴的な表現を蓄積することである。
○メタファーを通じて、人間は知っていることを新しい方法によって結びつけ、知ってはいるがうまく表現できないことを言語化しはじめる。
○メタファーがおよそ直感によって導かれながら、一見懸け離れた複数のイメージを結合させるのに対し、アナロジーは矛盾を調和させ、その特徴を明確化させるために構造化するプロセスである。
○まず、矛盾する事物や考え方をメタファによって結合させる。次に、これらの矛盾をアナロジーによって解決する。そして最後に、創造されたコンセプトを結晶化させ、それらを一つのモデルへと具現化する。このモデルによって、企業内の他の部門や人々にもその知識が有効働くようになる。
○あいまいさに別の意味を生み出す源泉があり、そこから新鮮な考え方や新たな方向性が現れるのである。
○ミドルマネージャは、チーム・リーダとして企業内情報が縦横に流れる交差点にいる。すなわち、トップの思いにあふれる理念と、ビジネスの前線である混沌とした市場の現実との橋渡し役として働いているのだ。
○学習する組織は次の五つのことのマネージメントに長けていなければならない。
(1)システマティックな問題解決
(2)新しい考え方や方法の実験
(3)自社の経験や歴史からの学習
(4)他社の経験や過去の例からの学習
(5)知識の迅速で効果的な組織への移転
○受身的なやり方では知識を獲得するのはむずかしい。何かを表現してもらうより、自ら積極的に体験するほうがずっと価値があるのだ。
○組織の境界を取り除いて、ボーダーレスとし、自由なアイディアの交換を促進することである。
○第一の間違いは、学習を「問題解決法」であると、きわめて狭い範囲で定義しているため、外的環境の問題を発見し、誤りを正すことに的を絞っていることである。
○グループ学習の方式がうまくいかないと、プロフェッショナルは防衛的となり、他人からの批判をかわし、また自分自身を責めるのではなく、だれか他人に責任を転嫁しようとする。これらのプロフェッショナルの学習を進める能力は、それを最も必要とする瞬間に機能が止まってしまうことになるということである。
○人間というのは、信奉する行動ルールと実際に活用しているルールとの間の差異、また行動していると信じている方法と実際に行動している方法との間の差異に気づかず、いつも矛盾に満ちた行動を続けている。
○人間は、次の四つの基本的価値観に基づいて行動を設定していくという、一貫した傾向を持っているように思われる。
①一定方向のコントロールにとどまろうとする。
②勝利を最大にし、敗北を最小にしようとする。
③否定的感情を抑える。
④できるかぎり合理的であろうとする。
言い換えると、人間ははっきりした目標を定めたうえで、目標が達成されたかされないかにかかわりなく、自分の行動を評価していく。これらの基本的価値観を持つのは、恥ずかしい思いや、脅迫を感じたり、脆弱で無能であると感じることを避けるためである。
○失敗を経験したことのない人たちは、失敗への適切な対応方法を理解できないまま育ってしまう。このことが、実は人間が防衛的思考に走るという一般的傾向を助長している原因となっている。
○自分の行動を設定し、実践するときに、人間は思考の認識方法を理解する。そうすれば、自分たちの行動に関する「信奉する」理論と、「実際の」理論との隔たりを認識できる。
○そもそもいろいろな意見を戦わせることから、建設的なコンフリクトが生まれてくるものなのであるが、ところが実際には、全員が全員、相互理解できているわけではないから、ほとんどの場合、非生産的な結果に終わってしまう。
○「自分の組織になんとかイノベーションを起こそう」と考えているならば、人間関係に創造的な摩擦が生まれることを、あるときは促し、あるときは抑制することが不可欠である。
○異なるタイプの人がどれほど貢献度が高いかということを理解するうえで、大きな障害となるのは、自分自身のエゴである。
○だれかにメッセージを伝えるとき、あなたがどのような方法を好むかは関係ない。相手の思考様式に訴えかけるようなメッセージならば、説得力を増すだけでなく、理解も深まるはずである。
○効果的なガイドラインは、つねにシンプルかつ明瞭なものである。
○認識パターンの志向が理解できていなければ、コンフリクトを個人的な問題だと片付けたり、あるいは、それを拒絶してすませたりしがちだ。
○経験は最良の師、ということわざがある。私たちの人生においては、たしかにそれは事実だ。では、企業においてはどうだろうか。
○新しい作業方式に関する研究は、新製品の研究に匹敵するほど重要である
○製品を売るのではなく、むしろユーザーが自社のニーズを見定め、最も適した製品を創造していくことを支援するための経験を売るようになってくる。我々の製品は、顧客の学習ということになる。
○正規のマニュアルの規定は仕事をやるうえではほとんど役に立っていないとの結論に達した。
○身近な問題を別の新鮮な角度から洞察した結果を、たの人々もその重要性を理解できる形で伝達するにはどうすればよいか
○人々に新しい洞察の結果を話すだけでは十分ではない。むしろその力と可能性を、まざまざと再現できるような形で彼らに体験させなければならない。
○プロフェッショナルの知的能力の重要性が高まってきているにもかかわらず、「プロフェッショナルの知的能力とは何か」「どうすればそれを開発できるのか」「どう活用するのか」といった基本的な問いかけにすら、系統だった答をもっているマネージャーはほとんどいない。
○ITは、巨大で近代的な仲介ビジネスを効率的かつ柔軟性に富むものにしている。
○自分の一番大切な財産である知識の共有をいやがるというプロフェッショナルにありがちな性癖の克服は、よくある、そして困難な挑戦課題である。
○特殊な課題に挑戦するスパイダー・ウェブ
○優れた人材の採用、訓練、動機づけの手法など、プロフェッショナルの知的能力のレバレッジのためにはいろいろなことができる。しかし、次第に人間の知的能力だけを管理するだけでは、追いつかなくなってきている。特別に設計されたソフトウェア・システムに支えられたより根源的な組織構造が、能力を獲得し、収斂させ、レバレッジを最大限にするためにはますます重要になってきている。
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Postscript
企業は、知識を共有できる仕組み作りが重要性を感じていると思います。
現状は、ほとんどの企業で手付かずだと思います。
知識を共有できる仕組みづくりには、多くのエネルギーと費用がかかりますし、どうやったらいいのか分からないからという点が、原因だと思います。
従業員主導の仕組みづくりを経営陣が応援できるかが、知識共有の仕組みが根付くかどうかの大きな分かれ目になるのだと思いました。
個人についても同じことが言えると思います。
今後、個人の能力を中心に組織が作られ、その組織で仕事するということが主流になってくるのではないかと思います。
そうすると、個人のナレッジ・マネージメントをどう実現していくかということが、今以上に重要性を増してくると思います。